更新回数だけではなく、雇用の通算期間も解雇権濫用の法理の類推適用の有無の判断上、重要な意味をもっています。
ところで、裁判例によると、更新回数が数回あっても雇用の通算期間が一年未満の場合は、解雇権濫用の法理の類推適用に否定的な方向に働くようです。
この点は、パートタイム労働法の指針が、契約更新によって一年を超えて引き続き使用した場合には、契約の終了三○日前に予告するよう努力義務を課しているところからもうかがえます。
用者との契約を更新するのではなく、業務上の必要性、社員としての適格性を考えて更新の有無を決定すべきであり、その際、決定理由を書面に残しておくことも考えておくべきだと思います。
契約期間・更新手続きなどの管理状況契約当初、契約期間が定められ、その後「同一内容で更新します」とか、期間満了時に「明日からもよろしく」などの手続きで契約更新が行われ、雇用の通算期間が延びていけば、労働者が継続雇用の期待を強くしていくのも当然のことです。
とくに、契約期間の更新について黙示の更新を行うと、民法第六二九条の「前雇用と同一の条件をもって更に雇用を為したるものと推定するとの規定を根拠に、期間の定めのない契約に転化すると主張する立場もあり、トラブルの要因となります。
黙示の更新がなされたとしても、それだけで期間の定めのない契約に転化するとはいえませんが、黙示の更新や形式的な更新手続きは、解一展権濫用の法理の類推適用には肯定的に働くといえます。
使用者の方も、期間契約であるということを意識していないといわれても仕方ないといえます。
そこで、期間雇用の場合は、必ず、雇用契約書を作成し、更新時には、事前に面談を行ったうえで更新の有無を決定し、改めて新しい期間雇用契約書を作成すべきです。
そして、更新の有無を決定する際、問題がある労働者については、更新を拒絶するか、あるいはその問題点を指摘し、改善しなければ次の更新はないということを明確に意思表示しておくべきです。
当該雇用における雇用継続の期待をもたせる言動・制度契約期間の更新を重ねた後の期間満了による更新拒絶に、解雇権濫用の法理が類推適用されるかどうかは、当該雇用の常用性、契約更新回数の増加、雇用の通算期間の長期化、更新手続きの簡略化などによって、労働者側に継続雇用の期待が生じた場合、その期待を法的に保護すべきかどうかという観点から考えることになります。
したがって、このような客観的事実関係からだけ継続雇用の期待が生じるわけではありません。
使用者の側が労働契約締結時などにおいて、直接的に労働者に雇用継続を期待させるような言動を行えば、それによって抱かれた労働者の期待を保護するのは、ある意味では当然のことといえます。
判例で問題となった事案は、二カ月の契約期間で雇用され、仕事の種類、内容においては本工と差異がない二カ月の期間満了で一雇い止めされた前例はない採用の際、「契約期間が満了しても、まじめに働いていれば解雇されることはない。
安心して長く働いてほしい」などといわれ、多くの更新を重ねていたにもかかわらず、更新を拒絶されたケースです。
また、このケースでは、更新手続きも簡易で、新しい契約書の作成などしていなかったようです。
このような使用者の言動があれば、期間雇用者が継続雇用の期待をもったとしても無理はないといえます。
期間更新の拒絶について、解雇権濫用の法理が類推適用されるかどうかについては、「期間雇用者に対する解雇権濫用の法理の類推適用」で説明した五項目を総合的に判断することになります。
しかし、その類推適用の有無については、重要な問題があると考えます。
それは、労働者の継続雇用の期待を保護すべきかどうかという観点とともに、使用者の更新拒絶を、当然のごとく期間満了として、あるいは正当なものとして保護すべきかどうかという観点も重視すべきではないかという問題です。
日本の法制度では、期間の定めがある労働契約を締結するかどうかは、契約の自由の世界にあり、何の法的規制もありません。
しかし、ヨーロッパの一部の国では、長期病休、産休、介護体期間雇用において、雇用継続を期待させるような使用者の言動は、重要な意味をもっているといえます。
また、当該一厘用に適用される就業規則などの規定が雇用継続を前提とした内容になっていれば、このことからも労働者の期待が生じることになるといえます。
当然更新、有給休暇、休職規定、配転命令権、時間外労働命令権などの規定は、本来、長期雇用を前提として設けられた規定であると考えられるので、この点からも労働者の期待が生じることになります。
暇などの代替労働者についてのみ期間雇用契約を締結できると制約しています。
もちろん雇用形態の多様化による雇用社会の活性化を図るためにも、立法で規制すべきではないと思いますが、期間雇用者について何らかの保護、つまり期間雇用契約について合理的な内容を求める必要性は否定できません。
本来、期間雇用契約が必要なのは、臨時の業務に対応して雇用するとか、特定のプロジェクトのためにその期間雇用する、あるいは正社員の一定期間の休業期間中に代替えのために雇用するなどの場合といえます。
ところが、日本の場合、終身雇用制という雇用慣行のために正社員の人件費が固定費となり、経営の硬直化を防ぐため、恒常的残業とともに雇用の調整弁としての常用的臨時工が出現しました。
そして、若年の臨時工においては、継続雇用の不安がある半面、正社員よりも時間単価が高い、身元保証人は要求されない、労務管理も正社員に比べると緩やかであるなどの労働契約上のメリットを有していたといわれています。
今日でも、自動車産業に就労する臨時工については、期間雇用面のデメリットがあるかわりに、賃金面でのメリットが保障されこのように、期間雇用者についても、雇用の不安に対する見返りがあったといえますし、現在もこのような取扱いが残っている場合もあります。
期間雇用で、雇用に不安があり、しかも労働条件も低いという典型的な例は、女性労働者の処遇にあるといえます。
極端な場合、コネがある女子大生は正社員として雇用され、それがない女子大生は契約社員の名のもとに雇用されて、正社員と同一の労働を提供しながら雇用に不安がある、賃金は低い、有給休暇も十分に行使できないという処遇がなされています。
しかし、このような期間雇用者に対する処遇は、契約の自由の範鴫にあり、法的に問題があるとはいえません。
理論的には、当該労働契約が民法第九○条の公序良俗に反し、無効になることがありますが、実際の実務においては、無効とされる可能性は少ないといえます。
したがって、この正社員と期間雇用者の労働条件の格差が、雇用形態を籍口した性差別であると認定されないかぎり違法になるとは考えにくいわけです。
しかし、このような契約内容が不合理であることは明らかだといえます。
確かに、正社員として雇用するか、期間雇用者として雇用するかは使用者の自由です。
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